逸話文庫:1:文藝:32

内外古今 逸話文庫 第一編

文藝

○ 林述齋死にいたるまで樂を廢せず

林述齋は平生へいぜい音樂を好み、少閑あれば則ち子弟を集めて合奏し、以て自らたのしむ、邸中に一室あり、なづけて陶寫軒たうしやけんといふ、陶詩の絲竹しちく陶寫の句に取るなり、其合奏は常に此處このところおいてす、晩年やんまさに死せんとするときまでも、なほ壁を隔てゝこれを奏せしめ、しながらこれを聞きしとなり