内外古今 逸話文庫 第一編
文藝
○ 林述齋死に抵るまで樂を廢せず
林述齋は
平生音樂を好み、少閑あれば則ち子弟を集めて合奏し、以て自ら
娯む、邸中に一室あり、
名けて
陶寫軒といふ、陶詩の
絲竹陶寫の句に取るなり、其合奏は常に
此處に
於てす、晩年
病で
將に死せんとするときまでも、
尚壁を隔てゝこれを奏せしめ、
臥しながら
是を聞きしとなり
音楽によって憂いを流し去ること。「糸竹」は弦楽器と管楽器の意から、楽器・音楽のこと。「陶写」の「写(寫)」は「瀉」(洗い流す)意か。原文では陶淵明の詩によるとあるが、辞典では「晋書」王羲之伝を出典とする。「須下正頼二糸竹一陶写上。」