内外古今 逸話文庫 第一編
文藝
○ ダブエツト慘苦の何たるを知らず
佛國の
畫工ダブエツトは、
平生親み深き友人ダントン及びカミールデスムリン等の、死刑に
處せらるゝ時、寫生術を研究せんとて、群衆と共に
現塲に臨み、
毫も悲哀の何物たるを知らざるものゝ
如し、一千七百九十二年九月ラフオールズに於て、
囚徒を虐殺せる時も、
亦現塲にあり、筆を執り悠然として其
實况を寫せり、レプール傍にあり、君は何を爲すやと問ひしに、ダブエツト冷然答へて曰く、
唯これ
惡漢が
終に臨み苦痛
痙攣するの狀を寫すのみと