逸話文庫:1:文藝:12

内外古今 逸話文庫 第一編

文藝

禿頭とくとうを石と誤まらる

エスキラス 紀元前五百二十五年生れ同四百五十七年死す は、誰れ知らぬ者なき希臘ギリシヤ戯曲の鼻祖びそなるが、世に傳ふる所に依れば、氏は晩年原野げんやに睡りしことありしが、恰も此時空中を飛來とびきたりし大鷲は、氏の禿頭はげあたまを一箇の石と誤認し、その上に大龜を落せしかば、氏は遂にこの龜の爲めに殺されたりといふ、その眞僞は固より保し難けれど、大戯曲家の末路實に憐むべきなり、