逸話文庫:1:武事:15
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内外
古今
逸話文庫 第一編
武事
○
長曾我部
(
ちやうそがべ
)
元親
(
もとちか
)
垣見
(
かきみ
)
和泉
(
いづみ
)
の
怯
(
けふ
)
を笑ふ
文祿五年、朝鮮にて
泗川
(
しせん
)
と云ふ處に城を
搆
(
かま
)
へたる時、
門脇
(
もんわき
)
の
狭間
(
はさま
)
を
垣見和泉守
家純
(
いへずみ
)
あげて切れと
下知
しけるを、長曾我部元親見て、人の胸あたりより腰あたりを
當
(
あ
)
て切たるこそよけれといふ、和泉守
下
(
さ
)
げたらば敵城内を
覘
(
ねら
)
ふべき
といふ、元親此門へ
押寄
(
おしよ
)
せ心よく内を見るほどに城兵よわりたらば、
一支
(
ひとさゝへ
)
もすべきや
、上げて切らば
敵の首の上を
射
(
い
)
べきか
と笑ひけるとぞ (湯淺常山)
原文ルビ「けよ」。誤植。
怯懦
(
きょうだ
)
。
垣見一直
(かずなほ〔かずなお〕)
。
音「げち・げぢ〔げじ〕」。
指図
(
さしず
)
、指令、命令。
はさま・はざま。塀・壁に開けた狭い穴。弓矢や銃で撃つために使う。銃眼、砲門。
窺い見るにちがいない。「覘」は覗き見る意。
いささかも持ち
堪
(
こた
)
えられまい。
敵の首の上を矢が飛んで行ってしまうだろうよ。