逸話文庫:1:武事:13

内外古今 逸話文庫 第一編

武事

眞田さなだ信濃守しなのゝかみ十二支砲じふにしはう

眞田信濃守幸貫ゆきつらつと海防かいばうとゞめ、大小火技くわぎを研究す、その近臣大日方おほひがた勘介に命じて諸州に遊歴し、あまね銃砲じゆうはうの利害を講究せしめ、遠く和蘭オランダの火技におよ天保てんぱう七年に至りて、つひに西洋製にし、十二支砲數十すうじう門を鑄造ちうざうす、其製そのせい一座六門ろくもんよりに至る、車臺しやだいして險峻けんしゆんの地は二人ににんこれをになふべし當時たうじ昇平しようへい日久ひひさしく、諸藩武備ぶびおこた、人もつを好むとす、のち數年すうねん其臣そのしん佐久間修理しゆりに命じ、和蘭人の書にり、三斤さんきん野戰やせん地砲ちはう十二寸じふにすん野戰人砲、十三寸野戰天砲數門を鑄造せしめ、これを松代まつしろ城外じやうぐわいに試む、本邦ほんぱう洋式の砲をつくることこれを始めとす (小宮山南梁)