逸話文庫:1:武事:12

内外古今 逸話文庫 第一編

武事

○ 丸山權太左衛門大竹を捻拉ねぢひし

丸山權太左衛門は、享保きやうはうの末仙臺せんだいより出たる相撲取なり、身のたけ六尺五寸、躰量たいりやう四十三貫目、眼色めのいろ黑く中肥ちうごへなり、其手形てがたを押せしを見るに八寸角あり、大坂天滿吉田氏の先祖せんぞ、丸山を招きて力量を試したるに、筧竹とひたけにすべき大竹のありけるを取りてねぢひしぎぬ、吉田大に驚き、誠に希有けう大力だいぢからなり、竹は我家の珍器ちんきとすべしとて、ねぢたる竹の上下を切り、風流をつくして花生はないけとし、丸山筒とめい持傳もちつたへしと云ふ (山東京傳)