逸話文庫:1:武事:2

内外古今 逸話文庫 第一編

武事

檜笠ひのきがさ馬標うまじるし敵軍を驚かす

山崎の合戰かつせんに、明智が先陣せんぢん護國公ごこくこうの先陣と戰をいどむ、時に侍大將森寺もりでら政右衛門忠勝、眞先まつさきかけて敵をおひたつる、森寺が馬印檜木笠ひのきがさなりしを、明智が者共見ていふ、檜木笠の馬じるし持せたる大剛の者下知げちせし有りさま、目をおどろかし候、姓名をうけたまはらばやと、度々よばはりけるを秀吉聞て、けふのいくさ森寺が一人の武名をあげしとて、桐の紋つきたる羽折はをりをあたへられけり (同上