逸話文庫:1:文藝:42

内外古今 逸話文庫 第一編

文藝

○ 定家卿淸肅せいしゆく以て家學を習ふ

歌仙かせん藤原定家は俊成の子なり、つとに史書に渉獵しようれうし、傍ら詩歌家學を以て名あり、其平常家に在りて歌を作るや、必らず南面なんめん開洞かいどうして、遠く望むを得せしめ、えりを正して端坐たんざす、其故を問へば、すなはち曰く平常淸肅の中に於て之を習へば、至尊しそんの前に至ると雖も、擧措きよそ度を失ふが如きことなからんといへりとぞ