内外古今 逸話文庫 第一編
文藝
○ 一蝶と馬琴と他人の印を用う
英一蝶赦に遇ひ歸鄕して後、作りし畫幅に、往々
薜國球、
君受、
薜君受氏、
北窓中隱などの印を
捺して
欵記となす、
倶に唐人の印なるを、一蝶得て
其儘用ひて己れが印とするなり、又馬琴が
乾坤二卦の間に
艸亭を刻せし印は、馬琴一夜
出行するに、
碌々足に觸るゝものあり、拾ふてこれを見れば乃ち銅印にて、二卦と艸亭とを
鐫る、馬琴
悅で云く
是れ
杜句に
原づくなり、
我業卒に大に兩間に
行はるゝの
兆なるべしと、是より乾坤
一艸亭とも
號す