内外古今 逸話文庫 第一編
文藝
○ 大槻磐溪、賴山陽と日本外史を論ず
大槻磐溪
西遊して賴山陽を
訪ひ、
談日本外史に及ぶ、磐溪云ふ先生
勝家の事を
記して
鬼柴田とす、もし唐人をしてこれを讀ましめば、或は認めて幽靈柴田と爲さん、山陽微笑して云く
然り、
夜叉に作れば穩當なりと、磐溪又外史の
躰裁を論じて云く、割據の群雄を以て、天下を統治する者と並べて
某氏某氏と云ふは、讀むもの
恐くは
統派辨じ難きの
惑を致さん、先生
以て何如となすと、山陽の云く
洵に然り、
當に再考すべしと、後に正記前記
後記の
目を加へしは、
盖し磐溪の言に從ふなり
「統」は嫡統、正統、伝統のように脈々と続いている本筋を表し、「派」は派生、分派、一派のように主筋から分かれ出た流れを表す。本流と支流とを区分すべきとする名分論の立場からの言葉と思われる。