逸話文庫:1:文藝:34

内外古今 逸話文庫 第一編

文藝

大槻おほつき磐溪ばんけい、賴山陽と日本外史を論ず

大槻磐溪西遊さいゆうして賴山陽をひ、だん日本外史に及ぶ、磐溪云ふ先生勝家かついへの事をしておに柴田とす、もし唐人をしてこれを讀ましめば、或は認めて幽靈柴田と爲さん、山陽微笑して云くしかり、夜叉やしやに作れば穩當なりと、磐溪又外史の躰裁ていさいを論じて云く、割據の群雄を以て、天下を統治する者と並べて某氏某氏ぼうし〳〵と云ふは、讀むものおそらくは統派べんじ難きのまどいを致さん、先生以て何如いかんとなすと、山陽の云くまことに然り、まさに再考すべしと、後に正記前記後記ごきもくを加へしは、けだし磐溪の言に從ふなり