論語 子路 第十三
(1)  子路(しろ)問フレ政(まつりごと)ヲ。子曰ハク、先(さき)ンジテレ之ニ勞(らう)セヨトレ之ヲ。請(こ)フレ益(えき)スルトコロヲ。曰ハク、無カラントレ倦(う)ムコト。
子路問政。子曰、先之勞之。請益。曰、無倦。
子路政を問ふ。子曰はく、之に先んじて之を勞せよと。益するところを請ふ。曰はく、倦むこと無からんと。

(2)  仲弓(ちゆうきゆう)爲(な)リ二季氏(きし)ノ宰(さい)ト一、問フレ政ヲ。子曰ハク、先(さき)ニシ二有司(いうし)ヲ一、赦(ゆる)シ二小過(せうくわ)ヲ一、擧(あ)ゲヨト二賢才(けんさい)ヲ一。曰ク、焉(いづ)クンゾ知リテ二賢才ヲ一而擧ゲントレ之ヲ。曰ハク、擧ゲヨ二爾(なんぢ)ノ所ヲ一レ知ル。爾ノ所ハレ不ルレ知ラ、人其(そ)レ舍(す)テンヤトレ諸(これ)ヲ。
仲弓爲季氏宰、問政。子曰、先有司、赦小過、擧賢才。曰、焉知賢才而擧之。曰、擧爾所知。爾所不知、人其舍諸。
仲弓季氏の宰と爲り、政を問ふ。子曰はく、有司を先にし、小過を赦し、賢才を擧げよと。曰く、焉くんぞ賢才を知りて之を擧げんと。曰はく、爾の知る所を擧げよ。爾の知らざる所は、人其れ諸を舍てんやと。

(3)  子路(しろ)曰ク、衞(ゑい)ノ君(きみ)待チテレ子(し)ヲ而爲(な)サバレ政ヲ、子將(まさ)ニルト 二奚(なに)ヲカ先(さき)ニセント一。子曰ハク、必ズヤ也正(たゞ)サンカレ名(な)ヲ乎ト。子路曰ク、有ルカナレ是(こ)レ哉、子ノ之迂(う)ナルヤ也。奚(なん)ゾ其(そ)レ正サント。子曰ハク、野(や)ナルカナ哉由(いう)ヤ也。君子ハ於(おい)テハ二其ノ所ニ一レ不ルレ知ラ、蓋(けだ)シ闕如(けつじよ)タリ也。名不レバレ正シカラ、則(すなは)チ言(げん)不レ順(したが)ハ。言不レバレ順ハ、則チ事(こと)不レ成(な)ラ。事不レバレ成ラ、則チ禮樂(れいがく)不レ興(おこ)ラ。禮樂不レバレ興ラ、則チ刑罰(けいばつ)モ不レ中(あた)ラ。刑罰不レバレ中ラ、則チ民無シレ所レ措(お)ク二手足(しゆそく)ヲ一。故(ゆゑ)ニ君子ハ名(な)ヅクレバレ之ニ必ズ可(べ)キナリレ言フ也。言ヘバレ之ヲ必ズ可キナリレ行(おこな)フ也。君子ノ於(お)ケル二其ノ言ニ一、無キノミレ所レ苟(いやし)クモスル而已矣ト。
子路曰、衞君待子而爲政、子將奚先。子曰、必也正名乎。子路曰、有是哉、子之迂也。奚其正。子曰、野哉由也。君子於其所不知、蓋闕如也。名不正、則言不順。言不順、則事不成。事不成、則禮樂不興。禮樂不興、則刑罰不中。刑罰不中、則民無所措手足。故君子名之必可言也。言之必可行也。君子於其言、無所苟而已矣。
子路曰く、衞の君子を待ちて政を爲さば、子將に奚をか先にせんとすると。子曰はく、必ずや名を正さんかと。子路曰く、是れ有るかな、子の迂なるや。奚ぞ其れ正さんと。子曰はく、野なるかな由や。君子は其の知らざる所に於ては、蓋し闕如たり。名正しからざれば、則ち言順はず。言順はざれば、則ち事成らず。事成らざれば、則ち禮樂興らず。禮樂興らざれば、則ち刑罰も中らず。刑罰中らざれば、則ち民手足を措く所無し。故に君子は之に名づくれば必ず言ふべきなり。之を言へば必ず行ふべきなり。君子の其の言に於ける、苟くもする所無きのみと。

(4)  樊遲(はんち)請(こ)フレ學バントレ稼(か)ヲ。子曰ハク、吾(われ)ハ不トレ如(し)カ二老農(らうのう)ニ一。請フレ學バントレ爲(つく)ルコトヲレ圃(ほ)ヲ。曰ハク、吾ハ不トレ如カ二老圃(らうほ)ニ一。樊遲出(い)ヅ。子曰ハク、小人(せうじん)ナルカナ哉樊須(はんす)ハ也。上(かみ)好メバレ禮(れい)ヲ、則チ民(たみ)莫(な)シ二敢(あ)ヘテ不ルモノ一レ敬(けい)セ。上好メバレ義(ぎ)ヲ、則チ莫シ二敢ヘテ不ルモノ一レ服(ふく)セ。上好メバレ信(しん)ヲ、則チ民莫シ二敢ヘテ不ルモノ一レ用(もち)ヰレ情(じやう)ヲ。夫(そ)レ如(ごと)クナレバレ是(か)クノ、則チ四方(しはう)ノ之民、襁(きやう)-二負(ふ)シテ其ノ子ヲ一而至(いた)ラン矣。焉(いづ)クンゾ用ヰントレ稼ヲ。
樊遲請學稼。子曰、吾不如老農。請學爲圃。曰、吾不如老圃。樊遲出。子曰、小人哉樊須也。上好禮、則民莫敢不敬。上好義、則莫敢不服。上好信、則民莫敢不用情。夫如是、則四方之民、襁負其子而至矣。焉用稼。
樊遲稼を學ばんと請ふ。子曰はく、吾は老農に如かずと。圃を爲ることを學ばんと請ふ。曰はく、吾は老圃に如かずと。樊遲出づ。子曰はく、小人なるかな樊須は。上禮を好めば、則ち民敢へて敬せざるもの莫し。上義を好めば、則ち敢へて服せざるもの莫し。上信を好めば、則ち民敢へて情を用ゐざるもの莫し。夫れ是くのごとくなれば、則ち四方の民、其の子を襁負して至らん。焉くんぞ稼を用ゐんと。

(5)  子曰ハク、誦(しよう)シ二詩(し)三百(さんびやく)ヲ一、授(さづ)クルニレ之ニ以テスレドモレ政ヲ不レ達(たつ)セ、使(つか)ヒシテ二於四方(しはう)ニ一不レバレ能(あた)ハ二專對(せんたい)スルコト一、雖(いへど)モレ多(た)ナリト亦奚(なに)ヲ以(もつ)テ爲(な)サント。
子曰、誦詩三百、授之以政不達、使於四方不能專對、雖多亦奚以爲。
子曰はく、詩三百を誦し、之に授くるに政を以てすれども達せず、四方に使ひして專對すること能はざれば、多なりと雖も亦奚を以て爲さんと。

(6)  子曰ハク、其(そ)ノ身(み)正シケレバ、不シテレ令(れい)セ而行(おこな)ハル。其ノ身不レバレ正シカラ、雖(いへど)モレ令スト不トレ從(したが)ハレ。
子曰、其身正、不令而行。其身不正、雖令不從。
子曰はく、其の身正しければ、令せずして行はる。其の身正しからざれば、令すと雖も從はれずと。

(7)  子曰ハク、魯(ろ)・衞(ゑい)ノ之政(まつりごと)ハ兄弟(けいてい)ナリ也ト。
子曰、魯・衞之政兄弟也。
子曰はく、魯・衞の政は兄弟なりと。

(8)  子謂(い)フ二衞(ゑい)ノ公子荊(けい)ヲ一、善(よ)ク居(ゐ)ルトレ室(しつ)ニ。始(はじ)メテ有ルニ曰ク、苟(いさゝ)カ合(あつま)ル矣ト。少(すこ)シク有ルニ曰ク、苟カ完(そな)ハル矣ト。富(さか)ンニ有ルニ曰ク、苟カ美(よ)シト。
子謂衞公子荊、善居室。始有曰、苟合矣。少有曰、苟完矣。富有曰、苟美。
子衞の公子荊を謂ふ、善く室に居ると。始めて有るに曰く、苟か合ると。少しく有るに曰く、苟か完はると。富んに有るに曰く、苟か美しと。

(9)  子適(ゆ)クレ衞(ゑい)ニ。冉有(ぜんいう)僕(ぼく)タリ。子曰ハク、庶(おほ)キカナ矣哉ト。冉有曰ク、既(すで)ニ庶キニハ矣、又何(なに)ヲカ加(くは)ヘン焉ト。曰ハク、富(ゆた)カニセントレ之ヲ。曰ク、既ニ富カナランニハ矣、又何ヲカ加ヘン焉ト。曰ハク、敎(をし)ヘントレ之ニ。
子適衞。冉有僕。子曰、庶矣哉。冉有曰、既庶矣、又何加焉。曰、富之。曰、既富矣、又何加焉。曰、敎之。
子衞に適く。冉有僕たり。子曰はく、庶きかなと。冉有曰く、既に庶きには、又何をか加へんと。曰はく、之を富かにせんと。曰く、既に富かならんには、又何をか加へんと。曰はく、之に敎へんと。

(10)  子曰ハク、苟(いやし)クモ有ラバ二用(もち)ヰルレ我ヲ者一、期月(きげつ)ノミニシテ而已可(か)ナリ也。三年ニシテ有ラントレ成(な)ルコト。
子曰、苟有用我者、期月而已可也。三年有成。
子曰はく、苟くも我を用ゐる者有らば、期月のみにして可なり。三年にして成ること有らんと。

(11)  子曰ハク、善人モ爲(をさ)ムルコトレ邦(くに)ヲ百年ナラバ、亦可(べ)シ二以テ勝チレ殘(むご)キニ去(のぞ)ク一レ殺(さつ)ヲ矣ト。誠(まこと)ナルカナ哉是(こ)ノ言(げん)ヤ也ト。
子曰、善人爲邦百年、亦可以勝殘去殺矣。誠哉是言也。
子曰はく、善人も邦を爲むること百年ならば、亦以て殘きに勝ち殺を去くべしと。誠なるかな是の言やと。

(12)  子曰ハク、如(も)シ有リトモ二王者(わうしや)一、必ズ世(せい)ニシテ而後(のち)ニ仁(じん)ナラント。
子曰、如有王者、必世而後仁。
子曰はく、如し王者有りとも、必ず世にして後に仁ならんと。

(13)  子曰ハク、苟(いやし)クモ正(たゞ)シクセバ二其(そ)ノ身ヲ一矣、於(おい)テレ從(したが)フニレ政ニ乎何(なに)カ有ラン。不ンバレ能(あた)ハレ正シクスル二其ノ身ヲ一、如(いか)レ正シクスルヲレ人ヲ何(ん)セント。
子曰、苟正其身矣、於從政乎何有。不能正其身、如正人何。
子曰はく、苟くも其の身を正しくせば、政に從ふに於て何か有らん。其の身を正しくする能はずんば、人を正しくするを如何せんと。

(14)  冉子(ぜんし)退(しりぞ)クレ朝(てう)ヨリ。子曰ハク、何(なん)ゾ晏(おそ)キヤ也ト。對(こた)ヘテ曰ク、有リトレ政。子曰ハク、其レ事(こと)ナラン也。如(も)シ有ラバレ政、雖(いへど)モレ不ト二吾ヲ以(もち)ヰ一、吾其レ與(あづ)カリ-二聞カント之ヲ一。
冉子退朝。子曰、何晏也。對曰、有政。子曰、其事也。如有政、雖不吾以、吾其與聞之。
冉子朝より退く。子曰はく、何ぞ晏きやと。對へて曰く、政有りと。子曰はく、其れ事ならん。如し政有らば、吾を以ゐずと雖も、吾其れ之を與かり聞かんと。

(15)  定公(ていこう)問フ、一言(いちげん)ニシテ而可(べ)キモノ二以テ興(おこ)ス一レ邦(くに)ヲ、有リヤトレ諸(これ)。孔子對(こた)ヘテ曰ハク、言(げん)ノ不レ可カラ二以テ若(ごと)キハレ是(か)クノ其(そ)レ幾(き)ス一也。人ノ之言ニ曰ク、爲(た)ルコトハレ君難(かた)シ、爲ルコトモレ臣(しん)不トレ易(やす)カラ。如(も)シ知ラバ二爲ルコトノレ君之難キヲ一也、不ランレ幾(き)セ二乎一言ニシテ而興スヲ一レ邦ヲ乎ト。
曰ク、一言ニシテ而喪(ほろ)ボスモノレ邦ヲ、有リヤトレ諸。孔子對ヘテ曰ハク、言ノ不レ可カラ二以テ若キハレ是クノ其レ幾ス一也。人ノ之言ニ曰ク、予(われ)無シレ樂シムコト二乎爲(た)ルコトヲ一レ君(きみ)、唯(た)ダ其レ言ツテ而莫(な)ケレバナリ二予(われ)ニ違(たが)フコト一也ト。如(も)シ其レ善ニシテ而莫(な)クンバ二之ニ違フコト一也、不ヤ二亦(また)善(よ)カラ一乎。如シ不善(ふぜん)ニシテ而莫クンバ二之ニ違フコト一也、不ランヤレ幾(き)セ二乎一言ニシテ而喪(ほろ)ボスコトヲ一レ邦ヲ乎ト。
定公問、一言而可以興邦、有諸。孔子對曰、言不可以若是其幾也。人之言曰、爲君難、爲臣不易。如知爲君之難也、不幾乎一言而興邦乎。
曰、一言而喪邦、有諸。孔子對曰、言不可以若是其幾也。人之言曰、予無樂乎爲君、唯其言而莫予違也。如其善而莫之違也、不亦善乎。如不善而莫之違也、不幾乎一言而喪邦乎。
定公問ふ、一言にして以て邦を興すべきもの、諸有りやと。孔子對へて曰はく、言の以て是くのごときは其れ幾すべからず。人の言に曰く、君たることは難し、臣たることも易からずと。如し君たることの難きを知らば、一言にして邦を興すを幾せざらんと。
曰く、一言にして邦を喪ぼすもの、諸有りやと。孔子對へて曰はく、言の以て是くのごときは其れ幾すべからず。人の言に曰く、予君たることを樂しむこと無し、唯だ其れ言つて予に違ふこと莫ければなりと。如し其れ善にして之に違ふこと莫くんば、亦善からずや。如し不善にして之に違ふこと莫くんば、一言にして邦を喪ぼすことを幾せざらんやと。

(16)  葉公(せふこう)問フレ政ヲ。子曰ハク、近キ者ハ説(よろこ)ビ、遠キ者ハ來(きた)ルト。
葉公問政。子曰、近者説、遠者來。
葉公政を問ふ。子曰はく、近き者は説び、遠き者は來ると。

(17)  子夏(しか)爲(な)リ二莒父(きよほ)ノ宰(さい)ト一、問フレ政ヲ。子曰ハク、無カレレ欲(ほつ)スルレ速(すみ)ヤカナランコトヲ、無カレレ見ル二小利(せうり)ヲ一。欲スレバレ速ヤカナランコトヲ則(すなは)チ不レ達(たつ)セ、見レバ二小利ヲ一則チ大事(だいじ)不トレ成ラ。
子夏爲莒父宰、問政。子曰、無欲速、無見小利。欲速則不達、見小利則大事不成。
子夏莒父の宰と爲り、政を問ふ。子曰はく、速やかならんことを欲する無かれ、小利を見る無かれ。速やかならんことを欲すれば則ち達せず、小利を見れば則ち大事成らずと。

(18)  葉公(せふこう)語(つ)ゲテ二孔子ニ一曰ク、吾(わ)ガ黨(たう)ニ有リ二直(なほ)クスルレ躬(み)ヲ者一。其(そ)ノ父攘(ぬす)ミテレ羊(ひつじ)ヲ、而子證(しやう)ストレ之ヲ。孔子曰ハク、吾ガ黨ノ之直キ者ハ異(こと)ナリ二於是(こ)レニ一。父ハ爲(た)メニレ子ノ隱(かく)シ、子ハ爲メニレ父ノ隱ス。直キコト在(あ)リ二其ノ中(うち)ニ一矣ト。
葉公語孔子曰、吾黨有直躬者。其父攘羊、而子證之。孔子曰、吾黨之直者異於是。父爲子隱、子爲父隱。直在其中矣。
葉公孔子に語げて曰く、吾が黨に躬を直くする者有り。其の父羊を攘みて、子之を證すと。孔子曰はく、吾が黨の直き者は是れに異なり。父は子の爲めに隱し、子は父の爲めに隱す。直きこと其の中に在りと。

(19)  樊遲(はんち)問フレ仁ヲ。子曰ハク、居處(きよしよ)恭(きよう)ニ、執(と)リテハレ事(こと)ヲ敬(けい)シ、與(と)レ人忠(ちゆう)ナルハ、雖(いへど)モレ之(ゆ)クト二夷狄(いてき)ニ一不ルナリレ可(べ)カラレ棄(す)ツ也ト。
樊遲問仁。子曰、居處恭、執事敬、與人忠、雖之夷狄不可棄也。
樊遲仁を問ふ。子曰はく、居處恭に、事を執りては敬し、人と忠なるは、夷狄に之くと雖も棄つべからざるなりと。

(20)  子貢(しこう)問(と)ウテ曰ク、何如(いか)ナルヲ斯(こ)レ可(べ)キカレ謂(い)フ二之ヲ士(し)ト一矣ト。子曰ハク、行(おこな)ツテレ己(おのれ)ヲ有リレ恥(はぢ)、使(つか)ヒシテ二於四方(しはう)ニ一、不ルヲレ辱(はづかし)メ二君命(くんめい)ヲ一、可シレ謂フレ士ト矣ト。
曰ク、敢(あ)ヘテ問フト二其ノ次(つぎ)ヲ一。曰ハク、宗族(そうぞく)ハ稱(しよう)シレ孝(かう)ナリト焉、郷黨(きやうたう)ハ稱ストレ弟(てい)ナリト焉。曰ク、敢ヘテ問フ二其ノ次ヲ一。曰ハク、言(げん)ハ必ズ信(しん)ニ、行(おこな)ヒハ必ズ果(は)タス。硜硜然(かう〳〵ぜん)トシテ小人(せうじん)ナルカナ哉。抑(そもそ)モ亦(また)可シ二以テ爲(な)ス一レ次ト矣ト。曰ク、今ノ之從(したが)フレ政ニ者ハ何如(いかん)ト。子曰ハク、噫(あゝ)、斗筲(とせう)ノ人ナリ。何(なん)ゾ足(た)ランヤレ算(かぞ)フルニ也ト。
子貢問曰、何如斯可謂之士矣。子曰、行己有恥、使於四方、不辱君命、可謂士矣。
曰、敢問其次。曰、宗族稱孝焉、郷黨稱弟焉。曰、敢問其次。曰、言必信、行必果。硜硜然小人哉。抑亦可以爲次矣。曰、今之從政者何如。子曰、噫、斗筲人。何足算也。
子貢問うて曰く、何如なるを斯れ之を士と謂ふべきかと。子曰はく、己を行つて恥有り、四方に使ひして、君命を辱めざるを、士と謂ふべしと。
曰く、敢へて其の次を問ふと。曰はく、宗族は孝なりと稱し、郷黨は弟なりと稱すと。曰く、敢へて其の次を問ふ。曰はく、言は必ず信に、行ひは必ず果たす。硜硜然として小人なるかな。抑も亦以て次と爲すべしと。曰く、今の政に從ふ者は何如と。子曰はく、噫、斗筲の人なり。何ぞ算ふるに足らんやと。

(21) 子曰ハク、不ンバ下得テ二中行(ちゆうかう)ヲ一而與(くみ)セ上レ之ニ、必ズヤ也狂狷(きやうけん)カ乎。狂者(きやうしや)ハ進ミテ取リ、狷者(けんしや)ハ有レバナリレ所レ不ルレ爲サ也ト。
子曰、不得中行而與之、必也狂狷乎。狂者進取、狷者有所不爲也。
子曰はく、中行を得て之に與せずんば、必ずや狂狷か。狂者は進みて取り、狷者は爲さざる所有ればなりと。

(22)  子曰ハク、南人(なんじん)有リレ言(い)ヘルコト曰ク、人ニシテ而無クバレ恆(つね)、不トレ可(べ)カラ三以テ作(な)ス二巫醫(ふい)ヲ一。善(よ)イカナ夫。不レバレ恆ニセ二其ノ德(とく)ヲ一、或(ある)イハ承(すゝ)ムト二之ニ羞(はぢ)ヲ一。子曰ハク、不ルノミレ占(うらな)ハ而已矣ト。
子曰、南人有言曰、人而無恆、不可以作巫醫。善夫。不恆其德、或承之羞。子曰、不占而已矣。
子曰はく、南人言へること有り曰く、人にして恆無くば、以て巫醫を作すべからずと。善いかな。其の德を恆にせざれば、或いは之に羞を承むと。子曰はく、占はざるのみと。

(23)  子曰ハク、君子ハ和(わ)シテモ而不レ同(どう)ゼ、小人(せうじん)ハ同ジテモ而不トレ和セ。
子曰、君子和而不同、小人同而不和。
子曰はく、君子は和しても同ぜず、小人は同じても和せずと。

(24)  子貢(しこう)問ウテ曰ク、郷人(きやうひと)皆好(よ)ミセバレ之ヲ何如(いかん)ト。子曰ハク、未(いま)ダルナリ レ可(か)ナラ也ト。郷人皆惡(にく)マバレ之ヲ何如ト。子曰ハク、未ダルナリ レ可ナラ也。不トレ如(し)カ二郷人ノ善(ぜん)ナル者好ミシレ之ヲ、其ノ不善(ふぜん)ナル者惡ムニハ一レ之ヲ。
子貢問曰、郷人皆好之何如。子曰、未可也。郷人皆惡之何如。子曰、未可也。不如郷人善者好之、其不善者惡之。
子貢問うて曰く、郷人皆之を好みせば何如と。子曰はく、未だ可ならざるなりと。郷人皆之を惡まば何如と。子曰はく、未だ可ならざるなり。郷人の善なる者之を好みし、其の不善なる者之を惡むには如かずと。

(25)  子曰ハク、君子ハ易(やす)クシテレ事(つか)フルニ而難(かた)シレ説(よろこ)バシムルハ也。説バシムルニレ之ヲ不レバレ以(もつ)テセレ道(みち)ヲ不レ説バ也。及(およ)ビテハ二其(そ)ノ使(つか)フニ一レ人ヲ也、器(き)ニスレ之ヲ。小人(せうじん)ハ難クシテレ事フルニ而易シレ説バシムルハ也。説バシムルニレ之ヲ雖(いへど)モレ不トレ以テセレ道ヲ説ブ也。及ビテハ二其ノ使フニ一レ人ヲ也、求(もと)ムレ備(そな)ハランコトヲ焉ト。
子曰、君子易事而難説也。説之不以道不説也。及其使人也、器之。小人難事而易説也。説之雖不以道説也。及其使人也、求備焉。
子曰はく、君子は事ふるに易くして説ばしむるは難し。之を説ばしむるに道を以てせざれば説ばず。其の人を使ふに及びては、之を器にす。小人は事ふるに難くして説ばしむるは易し。之を説ばしむるに道を以てせずと雖も説ぶ。其の人を使ふに及びては、備はらんことを求むと。

(26)  子曰ハク、君子ハ泰(ゆた)カニシテ而不レ驕(おご)ラ、小人ハ驕リテ而不トレ泰カナラ。
子曰、君子泰而不驕、小人驕而不泰。
子曰はく、君子は泰かにして驕らず、小人は驕りて泰かならずと。

(27)  子曰ハク、剛毅(がうき)木訥(ぼくとつ)ハ近シトレ仁(じん)ニ。
子曰、剛毅木訥近仁。
子曰はく、剛毅木訥は仁に近しと。

(28)  子路(しろ)問ウテ曰ク、何如(いか)ナルヲ斯(すなは)チ可(べ)キカレ謂(い)フ二之(これ)ヲ士(し)ト一矣ト。子曰ハク、切切(せつ〳〵)偲偲(しゝ)トシテ、怡怡如(いゝじよ)タルヲ也、可シレ謂フレ士ト矣。朋友(ほういう)ニハ切切偲偲トシ、兄弟(けいてい)ニハ怡怡タルナリト。
子路問曰、何如斯可謂之士矣。子曰、切切偲偲、怡怡如也、可謂士矣。朋友切切偲偲、兄弟怡怡。
子路問うて曰く、何如なるを斯ち之を士と謂ふべきかと。子曰はく、切切偲偲として、怡怡如たるを也、士と謂ふべし。朋友には切切偲偲とし、兄弟には怡怡たるなりと。

(29)  子曰ハク、善人(ぜんにん)モ敎(をし)フルコトレ民(たみ)ヲ七年(しちねん)ナレバ、亦(また)可シ二以テ即(つ)ク一レ戎(じゆう)ニ矣ト。
子曰、善人敎民七年、亦可以即戎矣。
子曰はく、善人も民を敎ふること七年なれば、亦以て戎に即くべしと。

(30)  子曰ハク、以(もつ)テ二不ルレ敎(をし)ヘ民(たみ)ヲ一戰(たゝか)フハ、是(こ)レ謂(い)フトレ棄(す)ツレ之ヲ。
子曰、以不敎民戰、是謂棄之。
子曰はく、敎へざる民を以て戰ふは、是れ之を棄つ謂ふと。
(本文はtaiju生作「漢文エディタ」原文よりHTMLに変換したものである。原文は後日利用の便を考えて、このファイルに含めてある。又、上下のコラムを連動させるスクリプトも入っている。)