増補 宮殿調度圖解 附車輿圖解 下
關根正直
(上・下 六合館 増補四版 1927.2.5 〔初版 1900.6.25、増補三版 1925.9.20〕)
※ 原本は和綴上下2冊。
例言
目次
<宮殿調度図解>
宮殿の部
縉紳家の殿舎
武家館舎の変遷
調度の部
<車輿図解>
車の部
輿の部
駕籠の部
下卷目次
宮殿調度圖解目次 終
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車輿圖解目次
車輿圖解目次 終
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調度の部
帳臺 濱床
母屋の内に、帳臺搆へとて一かまへあり。もと帳内とかきたるが轉じたるならんといふ。(後世武家奧殿の上段の間を帳臺といふも是れより出でしなるべし。)貴人の寢所に用ひられし所にて、皇后などのは濱床とて、高さ一尺ばかり、九尺四方程の臺あり。其上に繧繝の疊二帖を南北に敷きて、南を枕とす。此の疊を土敷といふ。皇后ならでは此の濱床をすゑず。板敷に直と敷くなり。
扨その上に四隅に土居を据ゑて、柱を立て鴨居をおきわたして後、塗り骨子の明り障子を覆ふ。かくて帳を四隅にかけ、又別に四方の中の所にもかく。これは壁代の如く、引きあげむ爲なり。(四隅の帳はたれしまゝにてあぐる事なし。)次に帽額を引き廻はす。これは帷のやうにて表ばかりなるを襞とりてかくるなり。かく帽額ならびに帳垂れたる樣は古畫に見えたるを、うつしてこゝに載す。
帳の中には常の几帳を三本、南及び東西の口に立てゝ(濱床の上なり。)其の几帳の高さに、三方の帳を卷きあげておくべきなり。又土敷といふむしろの上にもそれ\〃/唐綾などの綿入れたるを敷き、沈の枕・夜の具を用意しておく由也。委しくは『雅亮裝束抄』(*前出。源雅亮著。)に見ゆ。帳をかくべき柱の、前の方には左右とも、一尺ばかりを下げて肱金(*L字釘様の金具)をうち、これに御角(*懸角)を一つ宛かけたり。沈色の木にて造り、白銀の籠をきせて、丸緒を付けて總あり。又後の柱にも、同じやうに肱金をうちてこれには左右とも鏡をかくる事定まれる作法なりき。御角とはもと水氣を避くる爲とて、犀角(*魔除けのために部屋に飾った。)を用ひし由なれども、當時犀角の乏しきによりて、沈木の色したるもの、多くは桑をもても(*ママ)作り、浪形を彫りて、上下に金物うちたるものなり。
此の帳の西にあたりて、又繧繝の疊三帖を敷き、其の上に東京錦(*「とうぎょうき(ん)」。前出。)の茵を敷く。よろづ廂の間の定に同じ。其のうしろに小さき厨子一雙をならべ据ゑて、右の方の上段に香壺(*香を入れる壺)の筥二合、下段に藥の筥二合をおく。今一つ左の方の厨子の上層には、草子筥二合、下層に櫛の筥二合をおく。その又後に五尺の屏風二帖を、中を引き重ねて立つべし。
北の障子をへだてゝ衣架(*衣桁)一雙並びに香の唐櫃一脚をおく。其のうしろに、又二階棚をたつ。それらの塲所は前に掲げし室内裝飾の圖を繰り返し見るべし。
獅子狛犬
『枕ノ草子』「めでたきもの」の條に「宮初めの作法、獅子・狛犬・大床子(*天皇の座る足付の台)などもて參りて、御帳の前にしつらひすゑ云々」とあるは、始めて皇后の位に立ち給ふ時の、御座のしつらひを云へるにて、御帳臺のもとに獅子と狛犬との形したるものをすゑおく作法なり。是は天皇・皇后の御帳臺に限ることにて、臣下は憚りて用ふる事なし。天皇の御料は『禁秘抄』(*順徳天皇の著。『建暦御記』等とも。承久三年〔1221〕成立。群書類従所収。)清凉殿の條に、「帳云々(*中略の意。)濱床如レ恒。獅子狛犬在2帳前南北1。左獅子。」と見え、皇后のは『類聚雜要抄』(*前出。群書類従所収。)に、「后宮御料ニ用2濱床1時者、帳帷云々。」注に「但立2獅子形1者、帳前南方帷之末之表ニ戸之左右之際ニ相向天立レ之。左獅子。」とあれば、立ておく作法は異なる事なし。猶同抄の註によれば、「獅子は色黄にして口を開き、胡摩犬は色白く口を開かず、角あり。」と記せるにて、其の形象想ひやるべし。今も神社の内陣、帳前左右にむきあひてすゑられたる是れなり。『徒然草』に、聖海上人出雲の神移したる社に詣でて、神前の獅子・狛犬そむきて後ざまに立ちたるを、「深き故あらむ。」といみじく感じたる一笑話、人の知る所なり。元は帳帷を風の吹きまくらぬ爲の鎭子なりしが、威儀の物ともなりたるなり。
簾
通例はもえぎ(青色)の絹に、黑く■(穴冠+果:くわ:穴:大漢和25556)の紋を染め付けたるして、四方に縁をさすなり。もとは帽額とて、簾の上に一幅の絹を、横に引きはりたるなり。これは簾の外にのみありて、内には張らず。宮中また神社などには、金襴にて、四方を綴ぢたるもあり。簾にはまた鈎(*「こ(う)」)と稱して、簾を卷きたる時、掛けおくべき金物あり。これと共に丸緒の總を下ぐ。之を鈎丸(*鉤丸〔こうまろ〕は鉤のことともいう。)と呼べり。禁中などにては、紫に染めさせられ、普通は黄・赤・黑と、三段に染めたるものとぞ。
壁代
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<宮殿調度図解>
宮殿の部
縉紳家の殿舎
武家館舎の変遷
調度の部
<車輿図解>
車の部
輿の部
駕籠の部